モバイルアドホックネットワーク(MANET)
MANETは基地局を使わず、無線端末のみで構成されるネットワークです。電波の到達範囲にない端末にも、別の端末が中継をすることで、目的の端末までパケットを転送できます。端末が移動して経路が切れることもあるため、効率的に経路を再構築することが必要です。経路の構築コストや構築時間を考慮した効率的な経路制御プロトコルが研究対象です。
Delay Tolerant Network(DTN)
DTNは、中継端末を用いてもパケットの配送ができない状況において、周囲に通信できる端末が現れるまでメッセージを保持して端末が移動するネットワークです。出会った端末にメッセージを渡す条件を考慮することで、メッセージの到達率や到達時間が変化します。出会った端末すべてにメッセージを渡すEpidemicルーティングでは、到達率は高く遅延時間も小さいですが、メッセージの送信頻度が高くなるとメッセージバッファが溢れる状況になり、到達率が低下してしまいます。従って、メッセージの発生頻度や、ノード密度を考慮したルーティングを研究しています。
P2Pネットワーク
ネットワークの構成では、クライアントサーバ方式がよく利用されています。しかし、サーバに負荷が集中することで、要求が処理しきれなくなったり、サーバダウンが発生することがあります。P2P方式では、サーバの役割が特定のノードに集中しない方式です。負荷が特定のノードに集中することがありませんし、ノードに故障が起きても、他のノードに影響を与えることが少ないです。P2Pでは、情報をどのノードが持っているかを検索する必要がありますが、効率的な検索アルゴリズムや、通信方式が研究テーマになります。
センサ応用
スマートフォンやスマートウォッチなどの端末には、加速度センサや心拍センサなど、各種のセンサが搭載されています。そのセンサを利用した応用システムの研究をしています。一例として、歯ブラシに加速度センサを付けて、歯の磨き方を評価するシステムを作成しています。歯科衛生士さんの磨き方を参考に、利用者の磨き方がどれだけ近いかで評価を行います。また、機械学習を使って、いま磨いている場所がどこかを分類するシステムの研究も行っています。
ITS(Interigent Transport Systems)高度道路交通システム
安全な道路交通をサポートするシステムの研究であるITSが注目されています。ここでは、スマートフォンを使って、車の前方や後方画像から車両を認識し、その相対速度や車両密度を求めてドライバーに危険を知らせるシステムの開発を行っています。これは、自動車会社との共同研究で実施しています。
このシステムでは、深層学習を用いて車両検知を行っており、
モバイルアプリケーション
スマートフォンやノートPCを使った様々アプリケーションの開発を行っています。特に最近は視覚障碍者をサポートするシステムの研究をしています。右の図(左側)は、視覚障碍者が歩行する際に前方に人や自転車などの障害物がある場合に、その存在を知らせるシステムです。また、右側の図は、食事の介助を想定して机の上にあるコップやボトルなどの位置を知らせるシステムです。物体検知には、深層学習を用いています。
位置情報
モバイルアプリケーションには位置情報を使ったものがたくさんあります。例えばカーナビや、ポケモンGoのような位置情報ゲームもその一つです。屋外では、位置情報はGPSで取得することが標準的ですが、屋内ではGPSが使えないため別な方法が使われます。無線LANの電波強度を用いる方法や、ARマーカを使う方法、BLEビーコンを使う方法、カメラ画像を用いたSLAM(地図作成)などがあります。
自分以外の多くの位置情報を使うことで、様々な応用が生まれます。しかし、位置情報はプライバシーでもあるため、精度とプライバシー保護のトレードオフがあります。プライバシーを守るための方法として、匿名化技術があり、その運用方法についての研究も行っています。
セキュリティ(秘密計算)
位置情報のようなプライバシーを含む情報の保持には、暗号化が行われます。しかし、情報処理のためには復号する必要がありますが、そのタイミングで情報漏洩が生じる可能性があります。その対策として、暗号化した状態で計算して、必要な計算結果が暗号化した状態で得られる秘密計算という技術があります。複数のサーバに暗号化したデータを分散して配置し、サーバ間の情報交換で計算を実行します。サーバ間の情報交換の回数が少ない秘密計算技術の研究開発を行っています。
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